クラウンワークス虚実概論  1章

狂気を受け入れろと、カウンセラーは言った。
友人を殺害した容疑で勾留された少年にとって、唯一の
救い手は、異常者――。しかし、それでいいのかもしれない。
少年が負った心的外傷は、常人には信じがたい、神と
魔述師の戦いの記憶に由来する。あり得ない前提を
受け入れて進まなければ、真相にはたどり着けない。
けれど、同時に全てを疑う必要もあるのだ。
七年ぶりに再会した幼なじみの少女が――聡明で
冷ややかな生徒会長が――赤い唇の陰に秘密を隠し
持つとき、全ての傷は賦活される。嘘を痛み止めにする
時間は終わりだ。至高の存在の前で、それは意味を
喪うのだから。