クラウンワークス虚実概論  1章

狂気を受け入れろと、カウンセラーは言った。
友人を殺害した容疑で勾留された少年にとって、唯一の
救い手は、異常者――。しかし、それでいいのかもしれない。
少年が負った心的外傷は、常人には信じがたい、神と
魔述師の戦いの記憶に由来する。あり得ない前提を
受け入れて進まなければ、真相にはたどり着けない。
けれど、同時に全てを疑う必要もあるのだ。
七年ぶりに再会した幼なじみの少女が――聡明で
冷ややかな生徒会長が――赤い唇の陰に秘密を隠し
持つとき、全ての傷は賦活される。嘘を痛み止めにする
時間は終わりだ。至高の存在の前で、それは意味を
喪うのだから。

どれだけ繰り返せばいいのだろう

どれだけ繰り返せば解ってくれる?

僕が関われば全ては災厄へと帰結するのだと

私は絶対に志を曲げない

故に私は座標となる

そして私は孤絶する

けれど

それは

本当に?

Chapter 1: PTSD Prevention and Treatment by Preventing the Materialization of Memory--or Sphinx

1章 記憶の物質化阻止によるPTSD予防と治療のあり方
――あるいはスフィンクス

怪訝な顔をしているね
情報という形を持たないものが質量を伴う物質になるなんて
まるで魔法だ

登場人物

  • 構成

    空館ソウ

  • 文章

    九城エリオ

  • イラスト

    雪灯