Cocoons and Psychology
撒かれた場所と心理学
碧く揺るがない決意。真夏に降り立った新雪のような、冷気と儚さを併せ持っている。
結晶病菌による”記憶の受け渡し”を研究するため、彼女は海を越えた。
記憶の移動は、本来なら教えるという迂遠な方法しかない。
それにしても夾雑物が入り込み、元の純粋さが必ず失われる。
伝言ゲームがその例だ。
もっと直接的な伝達法。
結晶病菌以外に、彼女には心当たりがある。
だからこそ、この2つに共通点があるのか。実用化は成るのか。
急いで識る必要があった。
冬までに何かを掴まなければならない。
この先は物語の未来の話。
学びは多かった。
痛みもそれだけ多かった。
記憶の受け渡しとは時に、元あった思考を、根本から覆してしまうものなのだ。
あることを識る前と識った後、同じ考えでいられる保証はない。
同じ人間でいられる確証はない。
そんな頼りない人間が強くあるには、どんな縁(よすが)があればいい?
答えは間に合わなかった。